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76.【高知の絶景三選】棚田・にこ淵・鏡川。水と人が紡ぐ「暮らしの風景」

私はもともと京都から高知に移住してきた人間だ。この地での暮らしに慣れてきたこの頃、「絶景」は意外と遠くではなく、暮らしのすぐそばにあると気づく。山の棚田に、透き通る川の淵、そして町を流れる静かな川。どの風景にも、人の手と想いが息づいているように感じる。今回は、そんな水と人がつくる高知の風景をめぐる、小さな旅の記憶を綴っていこうと思う。

津野町・貝ノ川の棚田 ― 地域が息づく“生きた景観”

高知県津野町の山あいにある貝ノ川地区。そこに広がる棚田を初めて見たとき、思わず足を止めた。

整然とした段々の稜線は、自然が描いた曲線のようでいて、どこか人の手の温もりが滲んでいる。長い年月をかけて積み上げられた石垣。形の揃った田んぼの区切り。その一つひとつに、暮らしの知恵や労力の跡が刻まれていた。

地域学習の授業で訪れた際、案内してくれたのは加藤さんという移住者だった。県外出身ながら、この棚田を守る活動に魅せられて津野町に住みついたという。「この景色を未来に残したいんです」と笑う彼の言葉が印象的だった。草刈りや祭りの運営を、地元の人たちと肩を並べて続けているらしい。

高知トラベルの筆者が特に心に残っているのは、キャンドル祭りの夜。棚田いっぱいに灯る無数の灯が、まるで星空を地上に移したようで、息をのむほど幻想的だった。その一夜のために、何日も前から準備する人々の姿がある。風景を守るというのは、単に景観を残すことじゃなく、人と人のつながりを絶やさないことなのだと気づかされた。

近代化が進む中で、手作業で守られる棚田はまさに“生きた文化遺産”だ。高知トラベルでは、こうした地域の営みや人々の思いを、旅を通じて丁寧に伝えていきたいと考えている。観光客として眺めるだけでは分からない、地域の底力がここにはある。

にこ淵 ― 静けさの中で、心が澄んでいく場所

にこ淵を訪れたのは、暑い夏の日だった。

「仁淀ブルーを見てみたい」──そんな軽い気持ちで自転車を漕ぎ出したのが始まり。でも、坂道を登るたび、景色が少しずつ変わり、気持ちまで静まっていくのが分かった。市街を抜けて仁淀川が姿を現すころには、空気まで透き通るような感覚があった。道端の花、地元の人の笑顔、そんな小さな出会いが旅の喜びをふくらませていく。

そして辿り着いたにこ淵。光が差し込むと、水面はエメラルドグリーンから深い青へ。滝壺の底まで透き通るその光景に、思わず息をのんだ。滝の音が静寂を包み、時間の流れが一瞬止まったように感じた。観光地というより、“心を洗う祈りの場”という表現がしっくりくる。

自転車を漕ぎだして約30キロ地点で立ち寄った小さなカフェ(仁淀川を眺めながらのお食事あおぎ(【旧店名】あおぎ)住所・高知県吾川郡いの町勝賀瀬 3192)では、地元野菜、フルーツのランチをいただきながら高知県産のショウガをふんだんに使った生姜焼きを食べました。友人は日替わりランチを注文していました。窓の外を流れる川をぼんやり眺めた。にこ淵の透明な水と、人のあたたかさ。その両方が、今でも記憶の中でやわらかく光っている。

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