はじめに
現在日本国内では、少子化により学校の合併や廃校が増加している。また、子どもに対する教育方針も大変シビアな時代となっていると感じられる。みなさんも学生の立場として、感じている悩みや不安もあると思う。将来的にも、教育制度が整っていなければ子どもを持つことさえ不安を感じてしまう。実際、そのように感じている家庭は少なくはないだろう。
そこで、私が高知に来てから感じ取った、高知の教育の在り方を語っていきたい。それは、これまでの日本の教育の先駆けとなる要素が、またこれからの日本の教育の問題解決の鍵がありふれる、そんな教育領域のロマンがこの記事では次々と露わとなっていく。
高知教育の歴史

高知の教育の始まりは、1874年に設立された「陶冶学舎」からである。陶冶学舎とは、現在の高知大学教育学部の起源であり、陶冶学校、高知県高知師範学校と改称されていった。また、1878年には高知県女子師範学校が設立され、はやくも県内で男女とも勉学に励むことができた。その後は、合併や新たな学部学科・小中学校の設置を繰り返し、現在に至る。
また、高知県立大学も高知にとって語らずにはいられない重要な歴史を持っている。高知県立大学は、1944年に高知県立女子医学専門学校として設立された。また、1956年に家政学部の中に看護学科を設置し、日本で最初の4年制看護学教育を開始した大学であるとされた。その後、文学部(後の文化学部)、社会福祉学部、健康栄養学部、大学院を新設し、2011年に男女共学となり、現在の高知県立大学と校名も変更された。
こういった歴史から、高知の教育は男女の教育の機会をはじめとして、日本の近代的な教育の整備に即座に対応し、時代に順応した教育を進めていくことができたのである。
実は教科書の無償化の始まりも・・?

私たちが義務教育の期間、すなわち小中学校の時代に、教科書はどのようにして手に入れていただろう。そう、無償で配布された記憶があるだろう。その歴史をたどっていくと、実は高知にたどり着くのである。
1961年、高知県長浜地区で憲法26条の「義務教育はこれを無償とする」を根拠に、「長浜地区小中学校教科書をタダにする会」が結成された。教科書は国が買い付けるべきものであり、「ただでないのは憲法違反ではないか」といった抗議の声が上げられ、署名運動や集会を開くなどの運動がなされた。当時、教科書を買わずに新学期を迎える小中学校の児童・生徒が約8割おり、不便な教育の現実が続いていたために始められたのである。こういった運動は新聞やテレビでも取り上げられ、全国に多くの支持を集めて各地でも運動が始まり、国会でも大きな問題として取り上げられた。そして、1962年に「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律」が制定され、1963年度から段階的に無償化が実施、ついには1969年度に小中学校の全学年で教科書無償給与が実現したのである。
私たちが義務教育を受けるにあたって必要不可欠となる教科書を無償で手に入れられたのには、過去に高知県から始まったこのような運動を起こしてくれた人々の存在や訴えがあったからこそであるというのを決して忘れてはならない。
高知県の教育の現在
高知県は、全国の中でも有数の恵まれた自然環境を有する。子どもたちが心身ともに健やかとなるために、高知県の自然環境を教材の一つとしてその自然の特性が教養に生かされている。高知県教育振興基本計画によると、知・徳・体をバランスよく伸ばすことは教育の基本であり、人格の形成にもつながるとし、気力や規範意識、他人を思いやる心などの徳を幼少期に育む。そして、身近な環境問題等を通じ国際的な視野を持ちながら、社会の一員として適切に行動できる人間を育成する。そういった、学校だけではなく家庭を含む地域全体で、今後の地域を支える子どもたちの育成に積極的に携わることが目標とされている。
また、そういった地域に根付いた教育と並行して、デジタル教育にも力を注いでいるということも高知の教育ならではであると考える。AIドリルや学習プラットフォーム「高知家まなびばこ」といった最新技術を活用した教材の導入や、山間部などの遠隔の地にいる子どもでも均等な教育を受けられるようにする遠隔授業配信センターの活用など、高知県の風土的特性にも順応した教育の提供が可能である。
高知の教育はやがて日本全体へ
全国の中でも高知県の教育の特性は、地域との連携・協働を積極的に推進していることが一番の特性であるだろう。それにより、地域全体で子どもを見守る体制をより密にしていくことが求められていると考える。つまり、多様な環境下で生活を送る子どもたち一人ひとりに合った見守り体制が必要不可欠ではないだろうか。子どもたちが自分の住む地域の中で自分らしく、かつ安心・安全な環境下で育っていくために、一人ひとりの個性を発揮する機会を充実したものにし、保護者や自治会との連携を確固たるものにすることが大切になっていくであろう。
教育を受ける側も、また受けさせる側も、多様で常に変貌していく社会の中でも恒常的な将来性を持って教育に携わっていくことが、これからの高知、そして日本の教育界隈の存在価値の向上へとつながっていくと確信している。
ここまで精読していただいたみなさんの心のうちには、将来の子どもたちのためにできることは何かを考えようとする意思がもうすでにある。実際、私自身もその段階である。自分自身に何ができるかを問いかけてみてほしい。そこで出てきた答えこそ、あなた自身ができること、あなたにしかできない教育のあり方だとぜひ実感してほしい。
また、下の記事は地域密着型の学びの現場にはどのような例があるかが詳しく書かれたものである。ぜひ一緒に読んでみてほしい。


コメント