始めに│自己紹介・こんな方にこそ読んでほしい
ご覧いただきありがとうございます。高知県立大学に通う「ほね」と申します。この記事では、昨年私が大学主催のボランティア活動に参加した際に感じたあれこれを、実際の活動内容とともにつらつらと述べていきます。当方、日頃から記事作りというものに縁がない生活を送っているため、本稿にもところどころに拙い箇所が散見されるかもしれませんが、そのあたりは温かい目で見守っていただけると幸いです。
「大学生活にも慣れてきたし、そろそろボランティア活動にでも参加してみようかな」「せっかく高知に来たのだから、地元ではできないような体験をしてみたいな」など、ボランティア活動、特に中山間地域でのそれに少しでも興味がある方にこそ、この記事をおすすめしたく思います。今回の舞台は、仁淀川町の「だんだんの里」といの町越裏門(えりもん)の「氷室の里」。名前はちょっと似ていても、全く異なる体験ができるこれらのボランティア活動を通じて、あなたも大学生活における新たな気づきを得てみませんか。
活動の動機│きっかけは浅ましい気持ちだった
普段から大学主催のボランティア活動の存在自体は把握しつつも、余暇との兼ね合いやアルバイトの都合などで参加を見送ってしまう日々。もしもそんな毎日を送る中で、「一泊二日」「宿泊費無料」「食事提供有」の三拍子が揃った夢のようなボランティア活動の案内が舞い込んできたとしたら、あなたは「なんてお得なんだ」と目を輝かせて食いつくかもしれない。
私の場合がそれだった。しかもその案内に記載されている宿泊先は、ネット上での評価も非常に高い旅館ときた。ただでさえ外泊というものに縁のない平凡な生活を送っていた私は、一寸の迷いもなく参加を希望する旨を高知県中山間地域対策課へ送信した。先方から返信が届き、ZOOMを使用した事前ミーティングも終え、活動日が訪れるのを待ち侘びる私の気持ちは日に日に高まるばかり。振り返ってみると、その時の私は、まるでサンタさんからの贈り物を心待ちにしながら期待に胸を膨らませる子どものようであった。もはや宿泊や食事を楽しむことこそが主な活動内容であり、実際のボランティア活動はそれに付随するおまけのような存在であるとさえ思いこんでいた。
「だんだんの里」にて│無数のキャンドルと人々の活気が地域を彩る
すっかり秋も深まった11月某日。いよいよ「だんだんの里」でのボランティア活動当日。今回参加するのは、私を含めて県大生が3人、それに引率役の県庁職員を加えた計4人だ。実際に参加者と顔を合わせた瞬間、さすがにこれまでのような浮わついた気持ちは少々鳴りを潜めた。代わりに、これから始まる活動への緊張感と責任感が静かに芽生え始めた。
高知駅から今回の目的地である吾川郡仁淀川町までタクシーで約1時間半。長く狭い山道を抜けた先に「だんだんの里」はあった。
この活動における最も大きな目的は、毎年この時期に開催される「長者 DE キャンドルナイト」という催しに向けた準備とその運営である。元来 “長者村” と呼ばれていたこの土地は、幾重にも重なる広大な棚田の美しさで知られており、現在は過疎化・高齢化という深刻な問題と向き合いながらもその魅力を外部へ発信し続けている。さて、現地の方々への挨拶を済ませ、いざ実際にその棚田を目にしてみると……。

なるほど、確かにこれは圧巻だ。遠巻きにではあるが、その荘厳な景観からは何百年もの間人々の命を繋いできた「生の拠点」としての息遣いが感じられる。早速私たちは棚田に上らせていただき、その縁にロウソクの入った瓶を一つ一つ丁寧に設置していった。落とさないように、そしてうっかり自分も落ちないようにと細心の注意を払う。

その後は椅子、テントの用意といった会場設営や料理の販売に向けた手伝いに尽力した。現地の方々は初対面の私たちにも、まるで以前から知り合いだったかのように親しみをもって声をかけてくださった。やや肌寒い秋空の下、その優しさに触れた私の心はじんわりと温かくなっていった。
和やかな雰囲気の中、地域の代表の方の挨拶でいよいよ今年の「長者 DEキャンドルナイト」が幕を開けた。食べて、話して、笑って、働いて――。人と人との距離が自然と近づき、あちらこちらから笑い声がこぼれる。子どもたちはおこづかいで買った手作りのおもちゃを手に走り回り、大人たちは温かな飲み物を手に、穏やかなひとときを過ごしている。私は言葉に表せない心地よさに包まれながら、中山間地域の魅力を五感で感じていた。
日もとっぷりと暮れた頃、いよいよ本日のクライマックス。現地の方が一斉にロウソクへ明かりを灯してゆくと、何層にも連なった棚田が、その輪郭を煌々と暗闇に浮かび上がらせた。まるで灯火の一つひとつが、この地域に生きる人々の思いを静かに映し出しているようだった。その美しさに見惚れていると、自分もこの光景を創り出すのに一役買えたのだと自信を誇らしく思うとともに、何十人もの人たちと協力し合って無事に一つのイベントを完成させられたことに大きな満足感を覚えたのであった。

「氷室の里」にて│「原木まいたけ」で芽生える達成感
季節は変わり2月某日。「だんだんの里」での活動を終えた私は、今度は「氷室の里」でのボランティア活動への参加を思い立った。今回の目的地は吾川郡いの町の越裏門という、比較的小規模な地域だ。事前に公開されていた募集シートによると特産品の「原木まいたけ」への植菌作業の手伝いが主な活動内容であるとのことで、字面からは想像もできないその実態に、私は案内を受け取った日から強く関心を抱いていた。ちなみに、今回の活動でも例の「三拍子」が揃っていることは言うまでもない(前回と比べるとそれへのこだわりがやや薄れていたのは事実だが、なるべく経費の少ない活動先を選択したい気持ちがまだ自分の中にあったことも否定できない)。
まだ日が昇り切らぬ朝6時30分。前回同様、参加者の面々と高知駅で合流し、タクシーに揺られること約2時間。南国のイメージが強い高知だが、車が山奥へ入っていくにつれ、次第に窓の外で雪がちらつき始めた。現地に到着し、荷物を持って下車。そこで真っ先に私の目へ飛び込んできたのは、大きな薪ストーブを囲んで暖をとりながら談笑している現地の方々の姿だった。当時を振り返ってみると、当時はまいたけへの植菌という初めて挑戦する作業なだけあってすこぶるやる気に満ちていた私だったが、その反面、もしも失敗が続いて他の人の足を引っ張ってしまったらどうしようという不安を抱えたまま当日を迎えていたのもまた事実だ。しかし地域住民の方々が私たちの姿を見るなり、「よう来たねぇ」「やっぱり平地と比べて寒いろ?」とにこやかに話しかけてくださったため、その瞬間、私の中のちっぽけな懸念は一瞬で払拭されたのだった。
作業の内容や方法についての説明を受け、いよいよ植菌開始…かと思いきや、私が指示されたのは、植菌後の原木を、病原菌を殺すための窯へと運び込む作業だった。予想外の作業を担当することになり一瞬たじろいたが、これもまた貴重な経験だと思い直し、私はいっそう気を引き締めた。ローラー式のコンベアに、植菌過程を経た原木が乗せられてゆく。自分はそれを専用のトレーに並べ、そのまま窯の上段から下段へと順に収納していった。トレーに乗せ、窯へ。トレーに乗せ、窯へ……。原木の一つ一つが想像以上に重く、それが次から次へと休みなく流れてくるため、この作業は決して楽なものではなかった。しかし、私は同時に楽しさも感じていた。これほどがむしゃらに体を動かしたのはいつぶりであっただろうか。心地よい疲労感を味わいながら、私は懸命に原木を窯へと運び込み続けた。

作業を終え、薪ストーブの上で香ばしく焼かれたあめごやおやきを頬張りながら、地元の方々と語らう温かな時間。「みんなのおかげでこんなに早く終わったよ」と笑う皆さんの嬉しそうな顔を見ていると、私の中で言葉にできない喜びがこみ上げてきた。この日は国の重要文化財に指定されている「山中家住宅」や「日本三大暴れ川」の一つである吉野川上流にも訪れたが、やはり最初に行ったまいたけ栽培作業で味わった達成感は別格だった。たとえ初対面同士でも、共通の目的のために協力し合えば不思議と心が通じ合い、自然と笑顔が生まれることを、身をもって感じた。作業を終えた後の充実感や達成感は、単なる観光や見学だけでは得られない、生きた学びと温かい人間関係の積み重ねから生まれるものだと感じたのである。

二つの活動を終えて│「三拍子」以上に大切な発見
今回の活動を通じたそれぞれの地域への貢献度は、広い目で見るとほんのわずかなものであったかもしれない。しかし、ボランティア活動に対する私の意識は確かに変わった。「三拍子」の恩恵に与れることも、大学生活のボランティア活動における一つの利点ではある。ただそれ以上に、地元の方々とのつながりを実感し、些細な会話や笑顔のやり取りの中で、地域の温かさや助け合いの大切さを深く感じられることにこそ、ボランティア活動へ参加する意義があるのだと感じた。
未知なる体験で得られる気づきは、あなたが想像しているよりもきっと大きい。あなたも「だんだんの里」「氷室の里」でのボランティア活動を通じて、感情が揺さぶられる「高知トラベル」を体験してみませんか。
おまけ│二つの活動中に撮影した写真の数々














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